BOZが語る MCバトル流・ビジネスマンスキルの磨き方①

<Profile>
BOZ

レペゼンサラリーマンラッパー。
現役会社員であり、都内で活動するラッパーである。
スタンスは、日本にいる正社員3500万人の代弁者。リリックを指でなぞりたくなるようなリズミカルなフローと時折見せる押韻が武器。
一番の特徴はステージング。バンド活動の経験を活かした「魅せる」LIVEに定評がある。
リリックの内容は常にリアルを求め、時にシニカルな一面も。代表作の十人十色では、
「やりたい、出来る、やらなきゃいけない このバランスを取ってるだけ」
「継続は力なり、って言葉は他人から教えられるが、自分で自覚した時の方が何十倍も効果を伸ばす」
「二年、いや三年、もしくは十年 石の上にも居続ければ滴る汗が余分なものを削り落としていく」
などと、社会人経験を生かした等身大のリリックで表現。
常にインサイドアウトを意識し、世の中をポジティブにするため活動中。

Introduction

近年ムーブメントを起こしているMCバトル。

主に1対1で行う即興でのラップの戦いであり、先攻後攻に分かれ、8小節ごとにバースのやり取りをして勝負を行います。

勝敗の付け方ですが、観客や審査員などの判定員を設けていることが多いです。ラッパー達はその場で思いついた言葉や人生経験を互いにぶつけ合い、どちらがより判定員の心を動かしたのか、という点で決まります。

このMCバトル、ビジネスシーンでのコミュニケーションに非常に似ているところはないでしょうか?

つまり、相手の言っていることを理解しつつ、違う角度から相手に提案をし、納得させる。しかもその場で考えなければなりません。

MCバトルでは観客や審査員を納得させるために、ラップでの立ち振る舞いや言動に対する説得力が判定に大きく影響しますが、ビジネスでも商談時の振る舞い方(説明の仕方や態度)や説得力(数字でのエビデンス)がかなり重視されますよね。

筆者である私はビジネスマンとして、またラッパーとしても活動する中で、両者に相関関係があることを実感してきました。
「コミュニケーションの中で相手を納得させる」という点では、ビジネスもMCバトルも一緒。この連載では、仕事で得たどのような経験がMCバトルに活かせるのか? 逆に、MCバトルで得たコミュニケーション上の気づきをどのようにビジネスに活かすことができるのか? またその両方で結果を出すにはどうしたら良いか? を、私の実体験をベースとしながらお伝えしたいと思います。

普段何気なく使っているコミュニケーションスキルを改めて意識してみることで、より効果的にビジネスやラップの場でそのスキルを発揮できるのではないでしょうか。ビジネスマンラッパーの皆様はもちろん、就職や面接に臨もうとしている学生ラッパーの皆様にも役立てればと思いますので、是非お付き合いください!

それでは早速、本題に入っていきます。
まずは、分かりやすいようにビジネスでのやり取りを挙げ、次にMCバトルでそのスキルが使われた場合の具体例を挙げて解説していきます。

Pattern1. オウム返し

相手が言った言葉をそのまま繰り返す、会話における常套手段の1つ。このオウム返しの効力は、相手の言ったことをきちんと聞いていますよ、という姿勢を見せられる点と、自分も繰り返し言葉にすることで頭に入り、話題から逸れない点があげられます。

【ビジネスシーン】

顧客「御社が提供してくれる商品〇〇に対してなんだけど、◯◯の状況で△△を使うとすぐに止まる。どうにかならないかな?」

自分「弊社の〇〇に対してですね。申し訳ございません。◯◯の状況で△△を使うとすぐに止まるということですが、すぐに取り掛かります。ちなみに××や◆◆は問題ありませんか?

相手の注文にだけ対応すれば問題ないところを、オウム返しで繰り返すことで、聞いている姿勢を示すことができます。またその他の情報を一度に聞くことで、相手に対する誠意と興味まで示せます。これがオウム返しのテクニックです。

では、このオウム返しのテクニックを使ったMCバトルの例を見てみましょう。
(※リリックは筆者オリジナルですが、もし誰かの言葉と被っている…なんてことがあったら是非教えてください。)

【MCバトル】

先攻「yo お前が生きてきた人生観 客も湧かなきゃ絶対に小せんだ 見た目だけのスーツ 無い新鮮さ 実際疲れて目が死んでんじゃん」

後攻「yo 俺が生きてきた人生観 小さくても勝負には真剣だ スーツで印象決まる日本社会 この意見に全員、異論はない」

先攻の、「お前が生きてきた人生観」というラインに対して、後攻では“自分が”生きてきた人生観、とオウム返しにすることで、その後の話を前向きに展開しやすくなり、相手のdisをむしろプラスに変える内容に転じています。

また「見た目だけのスーツ」というラインに対しては、「スーツで印象決まる日本社会」という日本の風潮をあえて述べることで、相手の言った「見た目だけ」という言葉を逆手に取り、かつ観客全員が身近に感じて納得するようなラインで成立させます。これがMCバトルで使えるオウム返しのテクニックです。

MCバトルでよくあるのは、相手が踏んだ韻に対してのオウム返しですが、それは同じ母音で韻を踏むことだけに注力されているものが多く、内容に関して返しているものはまだ少ないように感じます。
ビジネスでも、ただ内容を繰り返すだけになってしまうと、自分の意見を示したり、アピールすることが難しくなります。「内容のオウム返し」を意識し、ビジネスやMCバトルの場で生かしてみてはいかがでしょうか。

(②へつづく)

▼BOZのインタビュー記事はこちら

優勝者インタビュー vol.03 BOZ